非接触三次元測定機の仕組みと活用法|測定精度を高める導入メリットと注意点を解説

三次元測定機とは、対象物の三次元座標値を取得し、寸法や立体形状を高精度に測定する装置です。
従来のノギスやマイクロメーターでは難しい複雑な形状も正確に測定できるため、自動車部品や航空機部品、医療機器など、超精密加工の現場で幅広く活用されています。
本記事では、近年需要が高まっている「非接触三次元測定機」について、その特徴や種類、導入するメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
非接触三次元測定機とは?
非接触三次元測定機は、レーザー光やパターン光を対象物に照射し、反射した光をセンサーで検出して立体形状をデジタルデータとして取得する測定装置です。
対象物に直接触れずに測定できるため、柔らかい素材や変形しやすい部品、傷を付けたくない高精度部品などの測定に適しています。
接触式のようにプローブ(接触子)で点を測るのではなく、レーザーや光で「面」として捉えるため、一度に広範囲を効率よくスキャンできるのが特徴です。
取得したデータは3D CADと照合して誤差を分析したり、品質検査やリバースエンジニアリングに活用したりすることも可能です。
主な活用分野
非接触三次元測定機は、自動車業界、航空機業界、家電業界、医療分野、建築・土木など多岐にわたる分野で活用されています。
自動車業界では、外装パネルや内装部品の形状確認、エンジンや電子制御部品の品質検査に使用されます。
航空機業界では、翼やエンジン部品などの大型部品の検査に利用され、家電業界では既存部品の三次元データ化によるリバースエンジニアリングにも役立っています。
非接触三次元測定機の種類
非接触三次元測定機には複数の方式があり、対象物の形状や測定目的によって最適なタイプを選ぶことが重要です。
ここでは代表的な4種類をご紹介します。
【1】3Dレーザースキャナー
3Dレーザースキャナーは、レーザーを対象物に照射し、反射光を解析して立体形状を取得する測定機です。
据え置きタイプは高精度な定点測定に適しており、ハンディタイプは狭い空間や裏側の測定にも対応できます。
効率的に3Dデータを取得できるため、製造業や建築業、土木業、アパレル業、文化財調査など幅広い分野で活用されています。
【2】マルチセンサー測定機
マルチセンサー測定機は、接触式のタッチプローブと非接触式レーザーを1台に搭載したハイブリッドタイプです。
両者の特性を併せ持ち、複雑な部品や高精度が求められる製品の測定に適しています。
寸法、位置関係、輪郭形状などを高精度で測定でき、電子部品や医療機器、自動車部品などで多く採用されています。
【3】アーム型
アーム型は、人の腕のように複数の関節を持つアームで対象物の形状を測定するタイプです。
可動域が広く複雑な形状にも対応でき、小型軽量で設置や持ち運びがしやすいのが特徴です。
従来は接触式が主流でしたが、最近では非接触センサーを搭載したモデルも増えています。
精度面ではやや劣る場合があるため、測定範囲や目的に応じた選定が求められます。
【4】CT
CT(Computed Tomography)は、X線などを照射して対象物の内部構造を非破壊でデータ化する測定機です。
医療用CTと原理は同じで、工業分野では内部欠陥やボイド、寸法測定などに利用されています。
近年は、寸法評価や体積測定なども可能な「工業計測用CT」も登場しており、品質管理や製造検査に欠かせない存在となっています。
非接触三次元測定機を導入するメリット
非接触三次元測定機は、精密測定の現場で生産性と品質を両立できる先進的なツールです。
ここでは、従来の接触式測定機では実現できなかった、非接触式ならではの強みや導入効果について詳しく解説します。
複雑形状や大型製品もスピーディーに測定できる
レーザーや光を利用する非接触三次元測定機は、接触式では困難だった複雑な形状や大型製品の測定にも対応できます。
対象物の表面に直接触れず「面」でデータを取得するため、曲面や凹凸の多い部品も短時間で正確に測定可能です。
自動車の外装パネルや航空機の翼、建築資材など、大型かつ複雑な対象物の検査に適しています。
測定スピードが速く作業効率が向上する
非接触三次元測定機は、一度に広範囲をスキャンできるため、接触式のように「点」を順に測る必要がありません。
これにより測定時間を大幅に短縮でき、同一製品を多数検査する量産現場でも効率的に運用できます。
対象物を傷つけず繰り返し測定できる
接触式のようにプローブを押し当てないため、非接触三次元測定機では対象物に傷を付ける心配がありません。
表面に微細な加工が施された部品や、柔らかい素材、外観品質が重視される製品などにも安心して使用できます。
また、測定痕が残らないため、同一製品を複数回測定しても品質に影響を与えません。
設置や運用の自由度が高い
非接触三次元測定機は、比較的軽量なモデルやハンディタイプも多く、持ち運びや設置が容易です。
現場の生産ラインや出荷検査の場でも活用でき、専用測定室を設ける必要がない場合もあります。
工場のスペースを有効活用したい企業にとっては、導入しやすい選択肢といえるでしょう。
非接触三次元測定機を導入する際の注意点・デメリット
非接触三次元測定機は、測定効率の向上や非破壊での検査など多くの利点がありますが、導入前に把握しておきたい注意点も存在します。
ここでは、導入コストや精度、対象物の特性などに関する主なデメリットを解説します。
導入コストと維持費が高い
非接触三次元測定機は高精度で多機能な測定が可能な反面、導入コストが高額になりやすい傾向があります。
携帯性の高いハンディタイプでも数百万円程度、本格的な据え置き型では数千万円を超えることもあります。
さらに、機器の精度を保つためには定期的な校正やメンテナンスが必要であり、これらの維持費も運用コストとして考慮しなければなりません。
接触式よりも測定精度が劣る場合がある
レーザーや光を用いて測定する非接触式は、接触式に比べて測定精度が若干劣るケースがあります。
接触式の測定精度が1μm(マイクロメートル)程度であるのに対し、非接触式は10μm前後といわれています。
特に、幾何公差のように非常に高い精度が求められる製品の場合には、非接触式だけでは要件を満たさない可能性があります。
そのため、必要に応じて接触式との併用を検討することが望ましいです。
測定が難しい素材や表面がある
非接触式はレーザーや光を使うため、黒色・透明・鏡面など光を吸収または反射する素材では正確に測定できないことがあります。
そのような対象物を測定する場合、専用のパウダースプレーで表面に微細な白膜を形成するなどの「前処理」が必要です。
しかし、試作品や外観品質が重視される部品では、表面にコーティングを施すこと自体が難しいケースもあります。
【まとめ】非接触三次元測定機の導入で品質と効率を両立
非接触三次元測定機は、レーザーや光を用いて対象物の形状を高精度にスキャンできる測定機であり、複雑な形状や大型製品の測定にも対応できる点が大きな魅力です。
一方で、導入コストの高さや測定精度の限界、光を反射・吸収する素材への対応といった課題もあるため、用途や測定対象に合わせた適切な機種選定が欠かせません。
また、正確なデータ解析には専門的な知識も求められるため、運用体制を整えた上で導入を検討することが重要です。
導入をご検討の際は、3Dレーザースキャナーに強みを持つヤマイチテクノへぜひご相談ください。
1989年入社以来、長年のCADシステムの営業経験を活かし現在3Dレーザースキャナーを中心に営業展開。東日本を担当する。
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