3Dスキャナーを海外に持ち出す際に必要な「ATAカルネ」とは?利用手順からメリットまで解説
3Dスキャナーを導入すると、国内のみでなく海外でも使用する機会がでてくることがあります。
3Dスキャナーを海外へ持ち出す際には、いくつかの書類を用意する必要があります。
本記事では、その中のひとつ「ATAカルネ」について基本概念から具体的な利用手順、さらには利用することで得られる多くのメリットまで詳しく解説します。
(ATAカルネとは、国際展示会や見本市、スポーツイベントなどで使用する物品を一時的に輸出入する際に、関税や税金を免除するための通関手続きの一種です)
ATAカルネとは
ATAカルネとは、世界の国々で締結されている「物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)」における国際的な通関用書類です。
主に商品見本、展示用物品、職業に使用するものなど、日本に再度持ち帰る物品を他国へ輸送する際に使用されます。
ATAカルネを利用するメリット
ATAカルネを利用するメリットについて詳しく見ていきましょう。
通関手続きの簡素化
ATAカルネを利用することで、異なる国々の税関で都度通関書類の作成が不要になります。
たとえば、日本からアメリカに展示会用品を輸送し、展示会終了後に日本に戻す場合、通常の通関手続きでは4回の通関手続きが必要ですが、ATAカルネを使うことで手続きを大幅に簡略化できます。
輸入税の免除
ATAカルネを使用して通関した物品はすべて一時輸入として扱われるため、輸入税が免除されます。
これにより、コストの削減が可能となります。
たとえば、高額な展示用機材を複数国で展示する場合、輸入税の免除は大きな経済的メリットをもたらします。
手間と時間の削減
各国での通関書類作成や手続きを省略できるため、時間と手間を大幅に削減できます。
これにより、国際貿易やイベント準備の効率が向上し、より迅速な対応が可能になります。
信頼性と安全性の向上
ATAカルネは国際的に認められた書類であるため、税関での信頼性が高く、通関手続きがスムーズに進むことが多いです。
また、担保としての機能を持つため、万が一のトラブル時にも対応しやすくなります。
ATAカルネの利用条件
ATAカルネを利用するためには、複数の条件を満たしている必要があります。
まず、持ち込みたい国がATA条約に加盟していなければ利用できません。
たとえば、日本からフランスに展示用物品を輸送する場合、フランスがATA条約に加盟しているため、カルネを利用できます。
また、有効期間は1年以内であり、期間内に物品を再輸出する義務があります。
主に利用できる物品は商品見本、職業用具、展示用物品などですが、持ち込む国によっては一部の物品が認められないことがあります。
たとえば、展示会に使用する機材を輸送する際、その国の規制によって一部の機材がカルネの対象外となる場合があります。
さらに、法令に基づき、通関時に事前の許可や承認が必要な物品には、許可・承認書を添付することが求められます。
これにより、スムーズな通関手続きを行うことができます。
ATAカルネを利用できないケース
ATAカルネには利用できないケースも存在します。
まず、日本へ持ち帰らない物品は利用対象外です。たとえば、海外で販売する予定の展示品はカルネの対象外となります。
また、輸出時と形状や性質が変化する物品も対象外です。加工や修理が施される物品はこれに該当します。
消耗品や食品、価額が0円の物品もカルネを利用できません。
たとえば、展示会で配布する消耗品やサンプル品は利用対象外です。
さらに、貸出等でリース料が発生する物品や、各国の法律で輸出入が禁止されている物品も利用できません。
例えば、特定の化学物質や生物資源がこれに該当します。
自然破壊に通じる職業用具も対象外です。
たとえば、環境に悪影響を与える可能性のある採掘機器や伐採道具はカルネの対象外となります。
ATAカルネの利用手順
ATAカルネの利用手順について詳しく見ていきましょう。
【1】利用登録
まず、日本商事仲裁協会のWebサイトから利用登録します。
これにより、オンラインでの申請手続きが可能になります。
【2】オンライン申請
利用登録の完了後、オンラインでATAカルネを申請します。
必要な情報を入力し、申請書を提出します。
【3】書類の準備と提出
カルネの申請が完了したら、フライトスケジュールや通関日程の調整を行い、必要書類を準備します。
通関の日程に応じて指定の保税倉庫に貨物を搬入し、カルネ原本を指定場所に送付します。
【4】通関手続き
通関日には必要書類を持参し、空港の税関で輸出通関手続きを行います。
通関許可が下りると、税関でカルネに許可のスタンプが押印されます。
このカルネ原本を現地へ送付し、現地でも同様の手続きを行います。
ATAカルネの注意点
ATAカルネの注意点について、詳しく見ていきましょう。
有効期間の確認
ATAカルネの有効期間は発給日から最長1年間です。
有効期間内に物品を再輸出する必要があります。
期限を過ぎると再輸入手続きに支障が出ることがあります。
担保の確認
輸入通関の際、輸入税の担保書類として機能するATAカルネですが、担保預け入れで発給された場合、発給日から最長33ヵ月は返金手続きができません。
申請時の注意点
ATAカルネの申請時には、輸出入する物品の詳細情報や写真を準備する必要があります。
特に輸送する用品のシリアルナンバーや識別情報は重要です。
申請内容に不備があると、通関手続きが遅れる可能性があります。
まとめ
ATAカルネは国際貿易における通関手続きを大幅に簡素化し、コスト削減と効率化を実現するためのものです。
適切な手順を踏むことで、3Dスキャナーの海外への輸送がスムーズに行えます。
今回、解説した内容に参考にして、ATAカルネを活用しましょう。
なお、ATAカルネの申請の際に不明点がある場合は、下記にお問い合わせください。
1989年入社以来、長年のCADシステムの営業経験を活かし現在3Dレーザースキャナーを中心に営業展開。東日本を担当する。
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