モービルマッピングシステム(MMS)とは?最新技術の仕組み・活用事例・導入ポイントを徹底解説

道路・構造物・インフラの計測業務では、「作業の安全性」「計測精度」「省力化」が強く求められています。
こうした課題をまとめて解決する技術として注目されているのが「モービルマッピングシステム(MMS:Mobile Mapping System)」です。
本記事では、MMSの仕組み・導入メリット・活用事例・課題までを網羅的に解説します。
モービルマッピングシステム(MMS)とは
モービルマッピングシステムとは、高精度センサーを搭載した車両で周囲の空間情報を一括計測するシステムです。
走行しながら3Dレーザースキャナ・カメラ・GNSSなどのデータを同時取得することで、広範囲を短時間で3D化できます。
MMSを構成する主なセンサー
MMSは下記のような機器で構成されています。
- ●3Dレーザースキャナー:道路や構造物を高密度点群として(相対座標)取得
- ●GNSSアンテナ:車両位置(絶対座標)を取得
- ●IMU(慣性計測装置):傾き・加速度・回転を補正、車両位置(絶対座標)を取得
- ●カメラ:点群に色情報やテクスチャを付与
- ●オドメータ:走行距離による補正値を取得
これらを組み合わせることで、走るだけで高精度な3D空間情報を取得できるのがMMS最大の特徴です。
MMSで実現できること
MMSでは、次のようなことを実現できます。
短時間で大規模エリアを計測できる
人手による測量では、照準合わせ・記録・移動を繰り返す必要があり、広範囲の計測にはどうしても数日〜数週間かかります。
とくに道路や河川沿いは距離が長く、起伏も大きいため、担当者の体力的負担も大きくなります。
一方、MMSであれば計測車両を一定速度で走行させるだけで、周囲の地形・構造物を高密度な点群として連続取得できます。
停車や配置換えが不要なため、作業効率は従来の測量に比べて飛躍的に向上します。
交通規制が不要で安全性が高い
従来の測量作業では、作業員が路肩や車道に立ち、三脚・プリズムを設置する必要があるため、常に通行車両との接触リスクが伴っていました。
現場によっては交通規制や誘導員の配置が必要で、周辺環境への影響や追加コストも避けられません。
MMSは、計測機器を車両に搭載し、通常の交通の一部として走行しながら計測が完了します。
また、交通規制が不要なため、夜間工事のような制約の多い時間帯でも柔軟に測量が可能です。
計測漏れを防止できる
人手による測量では、計測対象の見逃しや、死角の発生、角度の取り忘れなどがしばしば問題となります。
特に複雑な交差点や構造物の密集エリアでは、「測ったつもり」が後から発覚する再計測リスクがつきまといます。
MMSは、車両の走行軌跡に沿って周囲を360度スキャンするため、視界に入った対象物はほぼすべて点群として記録されます。
後処理の段階で俯瞰的に確認することもできるため、測量中に気づかなかった箇所もデータ上でチェック可能です。
夜間・山間部など時間と場所を選ばない
夜間や早朝、霧が出やすい高地、急勾配の山道など、人が立ち入るには危険の大きい環境では、従来の測量は大きな制限を受けていました。
また、足場の悪い斜面では機器の設置だけでも大変で、作業時間も長くなりがちです。
MMSは、強力なレーザースキャナーと暗所対応カメラを備えているため、暗い環境でも安定したデータが取得可能です。
車両が走行できる道が確保されていれば、山間部・堤防沿い・林道などの危険箇所も、作業員が降りることなく計測できます。
モービルマッピングシステム(MMS)の主な活用事例
MMSは、次のようなことに活用されています。
災害シミュレーション・ハザード評価
地形を3D化し、浸水・土砂・氾濫などのリスク分析に利用できます。
実空間に近いモデルを作ることで、防災計画や住民向け資料の精度向上につながります。
施工シミュレーションの3Dモデル化
MMSで取得した点群を3D化すると、重機の導線・資材搬入計画・仮設設備の配置など具体的な施工シミュレーションに活用できます。
現場の「見える化」により、施工計画の精度が大きく向上します。
道路法面・河川堤防の点検
急斜面や見通しの悪い河川沿いでも、走行計測で安全にデータ取得が可能です。
経年変化の把握や、補修が必要な箇所の特定にも役立ちます。
道路台帳・基盤地図の作成
道路・交差点・ガードレール・建物位置などの現況調査において、MMSは高精度な位置情報を一括で取得できるツールとして定着しつつあります。
MMSの課題と注意点
MMSには多くの利点がありますが、導入にあたり理解しておくべき課題も存在します。
計測精度が走行環境に左右される
路面の凹凸、カーブ、渋滞など車両挙動が安定しない環境では、点群品質に影響する場合があります。
近年はIMU性能向上により補正が最適化されていますが、完全自動化には改善余地があります。
操作・解析には専門スキルが必要
キャリブレーション走行や点群処理など、一定の知識が求められます。
データ量も膨大で、PCスペックや解析ソフトが不可欠です。
機材・車両の導入コストが高い
高性能3DスキャナーやGNSSは高額で、車両搭載のカスタマイズ費用も含めると初期投資が大きくなります。
レンタル・委託計測と組み合わせる企業も増えています。
まとめ
現在、国土交通省にて道路交通上の課題解決に民間企業からのモービルマッピングシステム(MMS)活用案を実用化に向け検証実施中であり、モービルマッピングシステム(MMS)は、「スピード」「安全」「精度」「省力化」を一度に実現する次世代の計測技術です。
一方で、コスト・操作スキル・データ処理の課題もあるため、目的に合うシステムを選ぶことが重要です。
1989年入社以来、長年のCADシステムの営業経験を活かし現在3Dレーザースキャナーを中心に営業展開。東日本を担当する。
3Dレーザースキャナーの
販売・レンタル・計測業務受託
ハードウェア/ソフトウェアの販売から、機材のレンタル、計測業務受託まで
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